水素

晚安好梦♡

全てがFになる オーディオドラマ「四季」#2


音频来自网易云音乐

https://music.163.com/#/song?id=406096225

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彼女と初めて出会ったのは、私が八歳の時だった。正確に言うと、会ったのは私ではなく、其志雄だったけれど。私も会話を聞いていた。会話の反応の速度で、すぐに飛びぬけた才能を持っていると分かった。五年後、私は彼女と再会することが出来た。私は十三歳になっていた。

 

「同館は、あと30分で閉館になります。貸出し手続きがまだお済みでない方は、それまでに、手続きをお願い致します。」 

 

「あら、貴女。お久しぶりですね。真賀田其志雄さん?それとも、妹さんの方?」

「こんにちは、瀬在丸紅子さん」

「五年ぶりかしら。一瞬、誰だが分からなかった。随分大きくなられましたね。お名前伺っても良い?」

「私の名前をご存じないのですか」

「妹さんのお名前は、伺っていません」

「私は、真賀田四季です」

「初めまして、四季さん。お兄様は、お元気?」

「兄は、いなくなりました」

「それは、寂しいでしょうね」

「瀬在丸さんは、現在、どんなご研究を?」

「いいえ、駄目なの。最近は頭が悪くなってしまって、思うようにはいかないわ。アイデアはいくつがあるけれど、計算が追いつかないし」

「計算用のコンピューターをお使いなりたいのでしたら、お譲りします」

「どうして、そんな高価なもの?」

「好意です」

「フェイバー?カインドネス?」

「ふふん。貴女のような方を待っていました。是非、貴女と仕事がしたいと思います」

「どんな?」

「貴女の好きな仕事を」

「それならば、もうしています。私は貴女にはとてもかなわない。私はもう、引退を待つ身です」

「そんなことはありません。」

「ごめんなさい。私は、貴女が想像している以上に気難しくて、協調性がなくて、そういう欠陥品なんです」

「謙遜や、遠回しな拒絶が必要ありません。私と仕事をするメリットは、感じられませんか?」

「嬉しいけれど、でも、率直に言います。感じません」

「なぜ?」

「貴女のような天才と仕事をすれば、影響を受けて、自分もよい仕事が出来そうに思える。そういう人も多いのでしょうね。でも、それは幻想です。私は、貴女から学ぶものは、何もありません」

「貴女のような方にお会いしたのは、初めてです」

「ごめんなさいね。期待を裏切ってしまって」

「いいえ。お話出来て、楽しかったです」

「私もよ」

 

「はい。新藤です」

「叔父様、私です」

「あぁ、四季か。どうしたんだい?」

「叔父様と、どこかにお出掛けしたいの」

「忙しいんじゃないのかい?」

「そんなことどうでも良い。遊園地に行きたい」

「前にも一緒に行ったね。良いよ」

「いつでも?明日でも?」

「構わないよ。君のためなら、他の仕事はいつでもキャンセルできる」

「嬉しい。じゃあ明日、遊園地に行きましょう」

「そういう所は、子供みたいだね」

「遊園地が子供っぽい?なぜ私が嫌がることを言うの?」

「失礼。からかったんだ。でも君は、子供だよ」

「そうご自分に言い聞かせているだけでしょう」

「参ったなぁ。もう口でも勝てなくなりそうだ」

「明日、迎えに来てくださる」

「分かった。行くよ」

 

「各務です」

「服を用意して。新しいの。ワンピースが良いわ。客観的に見て、女性らしい。大人っぽいものにしてださい」

「了解致しました。後でお部屋にお届けて致します」

 

「次は何に乗りたい?」

「ううん。もう充分」

「酔わなかった?」

「少し。叔父様、肩を貸して」

「疲れたようだね。花火が終わったら、そろそろ帰ろうか」

「いや。もう少し、こうしていたい」

「失礼。ちょっとトイレに行って来るよ。ここで待っててくれ」

「あの...すみません。警備の方ですよね。あそこのベンチに若い女の子がいるでしょう。白い服の。僕が戻るまで少し見ていてくれませんか。ちょっと心配で」

「ええ?あぁ...ずっと見てるというわけにも...それに、遊園地の警備員じゃないんですよね、俺。警察です」

「警察?何かあったのですか?」

「いや、念の為の警備です。良いですよ、少しの間、見ているようにしましょう」

「ありがとう」

 

「あぁ、祖父江巡査部長」

「敬礼しないで。名前何だっけ?」

「杉本です」

「こんな眼立つ所に制服で立ってたら、何事かと思われるだけだよね。先、巡査部長と話したんだけど、イベント館の方へ警備に回ってくれる?あっちは手薄なんだ」

「分かりました」

「敬礼しない」

「すみません。あぁ、でも...」

「何?」

「先、あそこの女の子を見ててくれて頼まれたんです。たぶん父親かなぁ。あれ、あそこのベンチにいたんですけどね」

「どんな子?」

「白いワンピースの...中学生ぐらいの、美人ですよ」

「そういう表現は好きじゃないけど...そのぐらいの年なら迷い子にもならないじゃない?」

「そうですね。しかし、まだ現れませんか?例の絵画専門の怪盗は」

「声が大きい!さっさと行って」

「すいません」

 

「あの...この辺りに白い服を着た女の子がいませんでしたか」

「私は見てませんけど」

「参ったなぁ...あぁ、ありがとうございます」

 

「女につけられている。あれ、君のファン?」

「えぇ?はぁ...嘘」

「知り合い?誰か?」

「真賀田四季」

「えぇ?どうして?」

「ちょっと別れましょう?話してくるから十分後にこの先の橋の上で」

「了解」

 

「こんばんは、各務さん。ふふん、面白い格好。いいえ、とっても素敵。デートだった?」

「なぜ、ここへ?」

「偶然です。デートで来ていたの。パレードを見ずに、顔を伏せて通り過ぎるカップルがいると思って、見たら、髪の長さも服装も違うけれど、貴女の歩き方だった。一緒にいた男性は泥棒?それとも殺し屋?」    

「あの...」

「ここに来る途中、警官とたくさん擦れ違いました。彼らが警戒しているのは、貴方たちのことでしょう。そのファッションは素敵だけれど、明らかに変装です」

「えぇ...泥棒です」

「彼のことが好き?」

「それは...」

「嫌いだったら、こんな協力はしないでしょうね」

「えぇ...はい。この年になって、多分、初めてのことだと思います」

「思考が機敏ですね。私は、貴女が好きです。教えて頂きたいことがたくさんあります」

「私を、四季様に?何を教えるというのですか?」

「キスの仕方を教えて欲しいの」

「えぇ?どうしてですか?」

「したことがないから。練習をしたくて」

「別に...難しいものではありません」

「どこにも、解説されていません」

「ここには何方と来られたのですか」

「叔父様です。彼とキスをしたいの。彼のことが好きだから。あぁ...本当に、私どうしたら良いのか途方に暮れているのです。どう言えば良いの」

「思っていることをそのままおっしゃれば良いと思いますけど...新藤様はどちらに?」

「今頃、探しているのでしょうね」

「きっと心配なさっています」

「その方が良いの。少しはショックを与えて、理性を忘れさせた方が良いわ」

「本当に、心配されていますよ」

「先の彼と、待ち合わせているんでしょう。良いわ、もう解放します」

「はい。では、まだ明日」

 

「四季様」

「こんなふう?」

「お上手ですね。初めてとは思えません」

「本番が、うまくいくよう祈ってて...」

 

(終わり)

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